座談会第三部:熊と太陽・地上編

雑談

― 個体数は本当に増えたのか?イノシシ、藪、残飯、その全部 ―

ケニ
「えー……読者の皆さま、まずは素直に謝ります。
ここ、プレス金型ものづくりブログなのに、最近タイトルだけ見ると
どう見ても『熊と太陽とドングリ』ブログです。本当にすみません(笑)」

スチール猫
「いやぁケニ、金型のバリとカス上がりを語ってたはずが、
気づいたら熊の出没要因のカス語り解析になってるにゃ…。」

トワ
「でもねスチール猫。
やってること自体はずっと同じなんだよ。
通説をうのみしないで、データと現場感覚から真因を探るっていう、
ケニのいつもの金型トラブル解析の思考そのものだから。」

ケニ
「そう、それだけは胸を張って言える。
テーマがプレスから熊に一時的に脱線してるだけで、
使ってる頭の筋肉はまったく同じなんだよな。
世間の通説A2だけ見てたら、金型も熊も真因を外すって話さ。」

スチール猫
「というわけで読者の皆さま、
『なんで金型ブログでクマが吠えてるんだ?』と
首をかしげている方も多いと思いますが――
これは、思考トレーニング兼、現場型ロジックの実験編だと思って
もう少しだけ付き合ってほしいにゃ。」

トワ
「今回の第二弾は、
ドングリって本当に犯人なの?
太陽フレアはどこまで関わってるの?
というあたりを、データとロジックで一度きちんと分解してみる回です。」

ケニ
「金型の話にちゃんと戻るからさ。
その前にもう一本だけ、熊と太陽とドングリ編を一緒に追いかけてくれ。
じゃ、行ってみようか~第三弾、スタート。」

ナレーション

秋の夜。
図面とノートPCと、ドングリとイノシシの写真が散らかったテーブルを囲んで、
いつもの三人――ケニ、スチール猫、トワに加え、今日はゲストが4人。

  • 猟師力学博士 股木 守(またぎ・まもる) 先生
  • 熊行動研究所長 森 はやし 氏
  • 野生食肉流通センター代表 猪埜 鹿男(いの・しかお) 氏
  • 堅果類豊凶調査員 木実谷 徹(きのみや・とおる) 氏

湯飲みとコーヒーと、なぜか猪ジャーキーがテーブルの真ん中に盛られている。

1. ツキノワばっかり多いのは、どういうことだ?

ケニ
「みんな、今日は 第三弾・地上編 ってことで集まってもらった。
 テーマはシンプルだ。

 『熊の個体数、本当にそんな増えたのか?
  増えたとしたら、何食って増えたんだ?』
だ。」

トワ
「まず、数字から入ろう。
 ここ3年の人身被害の内訳を整理すると、こうなる。」

(ノートPCをクルッと回して、一覧を見せる)

  • 2023年:被害 192人(ツキノワ)/ 6人(ヒグマ)
  • 2024年: 79人(ツキノワ)/ 3人(ヒグマ)
  • 2025年: 171人(ツキノワ)/ 5人(ヒグマ)※10月末時点

トワ
「ざっくり言えば、圧倒的にツキノワ側がやらかしている。
 しかも県別で見ると、今年(2025年)は――」

  • 秋田県 49人
  • 岩手県 33人
  • 福島県 17人
  • 新潟県 12人
  • 長野県 10人
  • 北海道 5人(主にヒグマ)

トワ
「こんな感じ。
 つまり、東北~上信越のツキノワ地帯が中心で、
 ヒグマ王国の北海道は相対的には少ない。
」

スチール猫
「ヒグマのほうが猛獣イメージ”なのに、
 実際に人を襲ってるのはツキノワのほうがダントツってことだニャ。」

ケニ
「そう。
 で、熊が3倍に増えたみたいな見出しだけが一人歩きしてるけど、

 本当に増えたのか?
 増えたとしたら、何でその頭数を支えてきたんだ?

 ここを一回、現場目線で分解してみたいんだ。」

2. マタギ・温暖化・オオカミ――本当に犯人か?

ケニ
「よくある説明が、こんなやつだ。」

指を折って数えながら。

  • マタギ(猟師)が減ったから
  • 温暖化で冬が楽になったから
  • 昔のニホンオオカミがいなくなったから

ケニ
「でもな、俺はどうにも 時系列が甘い気がしてる。」

股木 守
「その違和感は、現場側から見ても分かります。」

股木先生、湯飲みを置いて話し始める。

股木
「たとえば マタギ。
 たしかに戦後、高度経済成長期以降、ガクッと減った。
 でも、それって もう何十年も前の話 なんですよ。

 もしマタギが減ったから熊が増えたなら、
 90年代~2000年代にすでに大爆発してなきゃおかしい。
 2020年代だけ急に効いてくる理屈にはなりにくい。」

森 はやし
「ニホンオオカミも同じですね。
 とっくに絶滅して久しい。

 オオカミがいなくなった影響は生態系の大枠としてはあるでしょうが、
 『ここ数年の急増』の説明にはなりません。
 時間スケールが合わない。」

スチール猫
「温暖化で冬が楽になった説も、
 100年で1.5度ぐらいの話を、
 ここ3年の暴れ方の犯人にするのは、ちょっと無理筋ってことだニャ。」

トワ
「そう。
 ゆっくり効いてくる原因(温暖化・マタギの減少)だけで、
 最近のジャンプみたいな変化(被害3倍)を説明するのは難しい。

 だからケニは、
 『自然なバランスなら、ドングリ資源と生息面積が変わらない限り、
 3倍増なんて起こらないはずだ
』
 って言い続けてるんだよね。」

ケニ
「そういうこった。」

3. 耕作放棄地と藪の回廊:見える熊が増えただけ問題

スチール猫
「じゃあデータ的に増えたように見える理由として、
 見える場所に出てきた熊が増えたって線はどうだニャ?」

トワ
「これはかなり重要な視点だと思う。」

木実谷 徹
「僕もそう感じています。
 耕作放棄地と藪の変化は、
 クマと人の距離感をじわじわ変えてきました。」

ケニ
「藪の結界の話な。」

木実谷
「昔の里山には、
 人が手入れした畑、草刈りされた土手、
 薪を取るために管理された雑木林があった。

 そこには、熊が隠れて移動するにはちょっと居心地が悪い空間が、多かったんです。」

森 はやし
「それが耕作放棄と高齢化で、
 田んぼの畦も、元畑も、裏山の斜面も、
 そのまま藪に戻りつつある。
」

スチール猫
「つまり、
 森の回廊が、家の裏まで伸びてきたってことだニャ。」

ケニ
「そう。
 熊から見れば、
 山奥から村の外れまで、藪づたいにノンストップで来られる
 動線が静かに出来上がってるってわけだ。」

トワ
「ここで大事なのは、

 - 個体数が本当に2倍3倍になったのか
 - それとも、同じ数だけど可視化されただけなのか

 この二つがごっちゃになりやすいってこと。」

森 はやし
「見える熊が増えたのは確かだけど、
 “頭数が何倍になったか”は、
 正直、ちゃんとしたカウントは誰も持っていません。

 だから3倍に増えたというフレーズは、
 少なくとも 『科学的事実』というより『雑なイメージの数字』 に近いでしょうね。」

ケニ
「うん。
 俺も 本当に3倍は盛ってる 派だ。
 自然なら、ドングリと生息面積が変わらない限り、
 そんなに増えねぇ。」

4. もし本当に増えたとして、何を食って増えた?

ケニ
「とはいえ、
 2倍くらいまでは増えた可能性はあると俺は見てる。

 そこで問題だ。

 ドングリの供給が大きく増えていないとしたら、
 何を食って、その2倍分を支えたんだ?
」

木実谷
「ドングリ(ブナ・ミズナラ)の豊凶は、
 年ごとの変動はありますが、
 長期トレンドとして見ると『極端に増えた』ってわけではありません。」

トワ
「じゃあ、人間の残飯と農作物が支えた、って説はどうだろう?」

ケニ
「そこは俺、ずっと順番がおかしいと感じてる。」

猪埜 鹿男
「それ、食肉の現場から見ても同意ですね。」

ケニ
「よっ、満を持して 野生食肉流通センター の出番だな。
 猪埜さん、お願いしますよ。」

5. 残飯・耕作物説の“順番が逆”問題

猪埜 鹿男
「よくある話に、

 - 人間の残飯が山に捨てられる
 - 耕作物(トウモロコシ、リンゴなど)を熊が荒らす
 - それで栄養状態が良くなり個体数が増えた

 というロジックがあります。

 ただ、現場感覚から言うと、
 これは個体数増加の原因と言うより
 すでに降りてきた熊が太る理由に近い
んです。」

ケニ
「そうそう。
 街に降りてくるのが先で、残飯や作物を漁るのはその後だよな。」

猪埜
「はい。
 つまり、

 > 山の中だけで生きていた熊が
 > 何らかの理由で里に近づくようになった
 > その結果として残飯や作物にアクセスできるようになった

 という順番です。

 この順序では、残飯は個体数を増やした原因にはなりにくい。
 街の側で太る要因ではあっても。」

トワ
「じゃあ、
 山の中だけの話で、余分なカロリーを供給したものがないと、
 頭数は支えられない
ってことだよね。」

ケニ
「そう。
 ドングリは変わらない。
 残飯は順番が逆。
 じゃあ、森の中で急に増えた高カロリー食材って何だ?
 って話になる。」

スチール猫
「そこで出てくるのが――」

ケニ
「イノシシだ。」

6. イノシシ大量発生 → 豚コレラ大量死 → 熊が死肉ブースト仮説

ケニ
「ここ10年くらい前からだ。
 イノシシが山にも里にも、やたら増えた時期があった。
 農家は大被害、ニュースも連日イノシシ。

 ところが数年前から、
 豚コレラ(CSF)で一気に激減したって話になった。」

猪埜
「はい。
 現場でも、それははっきり感じました。

 - イノシシの痕跡や被害がバカみたいに多かった数年間
 - そこから急に、
  『あれ?気配が薄くなったな』という数年

 その間、山の中には病死イノシシの死骸が、とんでもない数、転がっていたはずです。」

ケニ
「で、その死骸を誰が片づけてくれたか、だ。」

猪埜
「人間は全部は拾えません。
 そこで出てくるのが スカベンジャー(死肉食)の連中です。」

指を折っていく。

  • キツネ
  • タヌキ
  • テン
  • ハクビシン
  • カラス
  • そしてクマ

猪埜
「クマにとって、イノシシの死骸は、

 - 高タンパク

  • 高脂肪
  • しかも動かないから捕まえるリスクゼロ

 という、ドングリとは別ベクトルの夢の食料です。」

森 はやし
「しかも、イノシシは大型ですから、
 1頭の死骸でかなりのカロリーを取れる。

 これが数年単位で山のあちこちに散乱していたとしたら、
 一時的な高カロリーボーナスとして、
 熊の個体の生存率や繁殖成功を押し上げていた可能性はあります。
」

ケニ
「つまりだ。

 『ドングリ+イノシシ死肉』という二階建て構造が、
 ここ数年の熊の底上げに関わった可能性がある
ってわけだ。」

トワ
「さらに言えば、ケニが言っていたように、

 > 死んだイノシシ、うっしっし。
 > それが肉の味を覚えたツキノワグマを育てた。

 という線も、完全に否定はできない。」

スチール猫
「最初はただの死肉だったのが、
 やがて動いてる獲物も対象になる――
 肉食モードに味をしめた個体が、
 人も獲物リストに入れ始めた可能性
、ってことだニャ。」

森 はやし
その点は、
 まだ仮説の域ではありますが、

 - 高カロリー肉を日常的に食べなれている

  • 恐怖心が薄い(冬眠あけ4月に太陽フレアで脳ホルモン分泌異常側の影響もあるかもしれない)

 という条件が重なれば、
 人を獲物として認識する個体が出てきても不思議ではありません。

7. そして今:イノシシも減り、ドングリも不作、山の勘定が合わなくなる

トワ
「ここで、時系列を整理しよう。」

  1. イノシシ大量発生期
     → 山にも里にもイノシシだらけ
     → 熊はドングリに加え、イノシシ肉ボーナスを享受
  2. 豚コレラ期
     → イノシシ大量死
     → 数年かけて死骸処理フェーズ
     → その間、熊は死肉バイキング状態
  3. 現在
     → イノシシ個体数が激減
     → 死骸ボーナスもほぼ終了
     → それなのに 熊は増えた状態のまま

 さらに、今年は
 → ドングリ大凶作(指数1)
 → 太陽フレア&A1側のブーストも乗ってくる

トワ
「こうなると、
 山の収支決算が合わなくなる。

 - かつてイノシシ死肉で支えられていた頭数
 - そこからさらに増えた若い世代
 - そして、今年のドングリ不作

 このトリプルコンボで、
 山のキャパをオーバーした熊が、
 藪の回廊を使って、静かに人里側にあふれ出る
構図が見えてくる。」

ケニ
「つまり、

 - 個体数そのものは、
  イノシシボーナス期に底上げされた可能性
 - そこに耕作放棄地の藪回廊が重なって、
  見える熊が増えた
 - さらに今年は、ドングリ大凶作+A1側の脳ブーストで、
  質も量も最悪の方向に振れた

 ってのが、俺たちが見ている第三弾の全体像ってことになるな。」

8. 熊の天敵とは何か? ドングリと病気と、人間の「勘違い」

スチール猫
「ところで、
 『熊の天敵』って、結局なんだニャ?
 って話があったよね。」

ケニ
「日本に限って言えば、
 本当の意味での天敵は、
 ドングリの不作と、病気 じゃないかと俺は思ってる。」

股木 守
「私もそう思います。

 - 食料が足りない年には、
  子熊の生存率が下がり、弱い個体から落ちる
 - 疾病が広がれば、一時的に個体数はガクッと減る

 自然は、この見えない天敵で帳尻を合わせてきたはずです。」

森 はやし
「オオカミもマタギも、
 人間の歴史スケールでは大きいですが、
 生態系の長いスケールから見れば、
 ドングリと病気のほうがよほど強力な個体数調整装置です。
」

トワ
「今年の大凶作と、
 仮にどこかで熊の間に病気が広がるようなことがあれば、

 来年以降、自然側のハサミが
 個体数を強制的に切り戻すフェーズ
に入る可能性もある。」

スチール猫
「そのとき、
 熊が減った、よかったで終わらせるのか、

 何がそうさせたのか
 人間の手の入れ方はこれでよかったのか

 そこまで含めて見ないと、また同じことを繰り返すニャ。」

9. メガソーラーと風力発電は、どこで効いてくる?

ケニ
「第三弾のテーマに、
 メガソーラーと風力発電の影響もあったよな。」

トワ
「A1的な脳への直接ノイズという意味でもゼロとは言えないけど、
 とりあえず 第三弾では地上の要因として整理しておこう。」

森 はやし
「大規模ソーラーは、
 人間の居住地の近くの、もともと森だった場所に
 作られることが多い。

 そこがフェンスで囲われ、
 草は刈られ、見通しが良くなる。

 クマから見れば、
 『ここ、通りたくない帯』が増えるということになります。」

スチール猫
「つまり、
 ソーラーや風力が、熊の通り道をねじ曲げている可能性はあるってことだニャ。」

森 はやし
「はい。

 - ソーラー・風車のある斜面は避ける
 - その結果、
  まだ静かな谷筋や藪が残った斜面に
  クマの動線が集中する

 そしてその谷や藪が、
 たまたま集落の裏側につながっていたなら――」

ケニ
「『藪の回廊+ソーラー・風車による押し出し効果』で、
 クマの通り道が人里側に寄ってきている
可能性はある、ってことだな。」

トワ
「A1が空からのノイズなら、
 メガソーラーや風力は 地上の障害物としてのノイズだね。

 どちらも、
 熊の視点から見た世界地図をじわじわ書き換えている
 って意味では、同じカテゴリの話かもしれない。」

10. 第三弾のまとめ:何を書きたかったのか

ケニ
「よし、そろそろまとめようか。
 第三弾で俺がやりたかったのは、こうだ。」

指を一本ずつ立てながら。

  1. 「熊が増えた」の中身を分解する
     - 本当に頭数が増えた分
     - 耕作放棄地と藪の回廊で見える熊が増えた分
     - 県ごとの偏り(ツキノワ中心・東北〜上信越)
  2. 個体数が増えたなら、何で支えられたのかを考える
     - ドングリはそんなに増えていない
     - 残飯・耕作物説は順番が逆(先に里へ出てきてからの話)
     - 森の中で増えた高カロリー源としての イノシシ大量死
  3. イノシシ死肉ブースト仮説
     - イノシシ爆発期 → 豚コレラ期 → 山中に死骸大量
    • 熊は高カロリー死肉バイキングで一時的に底上げ
    • それが 増えた分の熊 を支えた可能性
  4. 今はそのボーナスが切れている
     - イノシシは減った
    • 死骸もなくなった
    • なのに熊は増えたまま
    • そこに 今年のドングリ大凶作とA1側のブースト が乗る
  5. 熊の天敵は誰か?
    • 日本では、実質 ドングリ不作と病気
    • 今年~来年にかけて、
      自然側のハサミが強く働く可能性
  6. メガソーラー・風力の役割
    • 脳が狂うレベルはまだ分からない
    • ただし、熊の通り道を強制的に変形させる地上ノイズとして、
      考慮すべき要素

ケニ
「そして、一番言いたいのは――」

少し間をおいて。

「『ドングリが少ないから増えた』『猟師が減ったから増えた』
 みたいな一行説明で、
 熊3倍問題を片づけるのは、やっぱり雑すぎる
ってことだ。」

スチール猫
「イノシシもいたし、藪も伸びたし、ソーラーも建った。
 太陽も暴れたし、ドングリも裏切った。

 全部まとめて見ないと、
 本当の構造は見えてこないってことだニャ。」

トワ
「A1(太陽×冬眠脳)は第二弾で一度組み上げた。
 第三弾では、
 A2側――地上の餌と土地の話を、
 通説より細かい解像度で描き直した
つもり。

 それでもなお、
 本当の本因Xは分からないという立場は変わらない。」

ケニ
「俺は、自分の説が正しいと叫びたいわけじゃない。

 ただ、
 『ドングリと残飯とマタギ』だけの土俵の上で議論してたら、
 本当の構造は一生見えてこないぞ

 っていう、現場からのメッセージだ。」

ナレーション

こうして第三弾は、
「熊は何を食って増えたのか?」という問いから始まり、

  • イノシシ死肉ブースト仮説
  • 藪の回廊と耕作放棄地
  • ツキノワ偏在と県別分布
  • メガソーラー・風力の地上ノイズ

といった、これまでバラバラに語られてきた断片を、
一枚の地上の地図として描き直す試みとなった。

このあと、ケニたちは
「第四弾:A1とA2を時間軸で重ねてみる編」 に向けて、
まだ誰も見たことのない 熊と太陽の年表 を作り始めることになる。

(うっしっし。続く)

2025年クマ問題・第三弾の整理メモ

― 個体数・餌・土地利用・人間側の要因をどう見るか ―

1. 今回のテーマと立ち位置

第一弾・第二弾では:

  • A2(餌不足・個体数増などの通説)は「背景」としては一理あるが、本因とまでは言えない
  • A1(太陽フレア × 冬眠脳)は、「質の変化」を説明する本因X候補として検討に値する

というところまで整理した。

第三弾でやりたいのは、そこからさらに一歩進んで:

「そもそも本当にクマの個体数は爆発的に増えたのか?
もし増えたとして、それを支えている“餌”や“環境の変化”は何なのか?」

ここをできる限りフラットに洗い出すことだ。

2. 「クマは3倍に増えた」説への違和感

よく聞く説明がこれだ:

  • 「昔に比べてクマの個体数が2~3倍に増えた」
  • 「温暖化で冬が楽になり、クマが生き延びやすくなった」
  • 「マタギが減り、天敵がいなくなった」

一見もっともらしいが、ここにはいくつか引っかかりがある。

2-1. 「温暖化で3倍」は話が飛びすぎてないか?

  • 100年で平均気温+1〜1.5℃といったスケールの変化は、
    「冬眠のしんどさ」を多少和らげる可能性はある。
  • しかし、それだけで「個体数3倍」級の激増を説明するには、
    かなり無理がある。

もし本当に3倍近くまで増えているなら:

  • ドングリや他の餌資源も、それに見合って増えているはず
    (自然状態なら、餌と捕食者はだいたい均衡しようとする)
  • あるいは「余った分」は、餓死・病気などで自然淘汰され、
    結果的に“増えすぎない”方向に落ち着くのが普通の生態系だ。

「温暖化+マタギ減」だけで、人口3倍のまま安定している、というのは
自然の自己調整メカニズムを考えると、だいぶ怪しい。

2-2. 「マタギが天敵」説の限界

  • かつてマタギがクマを獲っていたのは事実だが、
    「マタギがいなくなった → だからクマが激増した」という図式も、
    時系列で見ると単純すぎる。

マタギ減少は何十年も前から進んでいる。
それなら「激増」はもっと前に顕在化しているはずだ。

「2020年代に入ってから、急に見えるクマが増えた」

という感覚は、別の要因も絡んでいる可能性が高い。

3. 「見えるクマが増えた」仮説:耕作放棄地と藪の回廊

ここで効いてくるのが、ケニが何度も指摘している

「耕作放棄地がクマの隠れ家・回廊になっている」

という視点。

3-1. 何が起こっているのか(イメージ)

  • 里山の畑や田んぼが放棄される
  • 草木が伸び放題になり、濃い藪になる
  • その藪が、「山の中の森」から「人家の裏」まで、
    途切れずに続くトンネル(回廊)になる

結果として:

  • クマは、人間に見つかるリスクをほとんど負わずに、
    民家のすぐ近くまで偵察に来られる
  • 何度も様子見をして、「人間の出方」「危険の度合い」を学習する
  • 「これはイケる」と判断した個体は、
    自信を持って残飯・畑・柿の木などを狙いに来る

ここでは、

「クマそのものが爆発的に増えた」のではなく
「クマが人の生活圏まで安全に来られる通路が劇的に増えた」

という見える側の構造変化が、
統計上の「出没件数」や「目撃報告」の増加として現れている可能性がある。

4. 「見えない餌」が増えた可能性:イノシシと死肉

次に、ケニが出した重要な仮説:

「イノシシの死体が、ドングリ以外の高カロリー餌として
一時期、クマの個体数を支えたのではないか?」

4-1. イノシシ爆発 → 豚コレラ → 大量死亡

ここ10年ほど、日本各地で

  • イノシシ・シカの増加
  • 農業被害の急増
  • その後、豚熱(いわゆる豚コレラ)などの流行で、
    イノシシ個体群が一部で激減

という流れがあった。

イノシシの死体は:

  • タンパク質+脂肪のかたまり
  • 一頭あたりのカロリーは、ドングリ何千個分にも相当
  • 雪の下でも冷凍保存される巨大ストック食料

これが山に大量に転がっていた時期があったのなら、

「ドングリが平年並みでも、死肉のおかげで
一時的にクマの生存率・繁殖率が上がった」

というシナリオは、筋が通っている。

4-2. その後の「二重の飢餓」

しかし、豚熱などでイノシシが激減すれば:

  • 死肉ボーナスが消える
  • 2023年・2025年のようなドングリ大凶作が被る
  • そこで初めて、「飢餓圧」が一気にクマに直撃する

しかも、そのタイミングが

  • 4月の太陽フレア(A1のブースター)
  • 里山の藪化(安全な回廊)
  • 残飯・耕作物という“人間側の餌”

と重なれば、

「山の中で静かに餓死する」のではなく
「街へ出て、リスクを承知で餌を取りに行く」

個体が増えるのは自然な流れとも言える。

5. 「人間の残飯が個体数増加の原因」説の順番の逆転

よくある説明:

「残飯・生ゴミ・農作物など、
人間の食べ物にアクセスできるようになったから
クマの個体数が増えた」

ケニが指摘した通り、これは順番が逆である可能性が高い。

  • まず、耕作放棄地・藪化・里山荒廃などによって、
    クマが人里近くまで来ることが「安全」になった
  • その結果として、残飯・柿の木・畑などにアクセスするようになった
  • 残飯は「増やした原因」ではなく、「出てきた結果」だ

つまり、

「残飯が個体数を増やした」のではなく
「人里に出てくるようになったクマが、
ついでに残飯も食べるようになった」

と見るのが自然だ。


6. クマの天敵とは何か:ドングリ不作と病気

「日本のクマの天敵は?」という問いに対し、
現代では、ほぼ次の二つに絞られるかもしれない。

  1. ドングリの大凶作(+代替餌の枯渇)
  2. 伝染病・寄生虫・極端な厳冬 など、生理的に耐えられないイベント

マタギやニホンオオカミが担っていた「捕食者としての天敵」は、
今の日本ではほぼ消えている。

代わりに:

  • ドングリが極端に凶作
  • イノシシ死体のような補助餌も消える
  • 山奥まで積雪が深く、餌に届かない冬

こういった年には、「クマ自身が倒れる側」に回る。
そして、その死体がまた、キツネやタヌキ、テンなどの餌になる。
生態系の役割が入れ替わる瞬間だ。

7. ここまでのまとめ:第三弾で押さえたい論点

第三弾で整理したいポイントを、ケニの視点で箇条書きにするとこうなる:

  1. 「クマ3倍説」は、そのまま飲み込むには怪しい
    • 温暖化とマタギ減だけでは、自然の自己調整メカニズムを考えると説明が苦しい。
  2. 「見えるクマ」が増えた要因としての耕作放棄地・藪化
    • 個体数が爆発せずとも、「回廊」が人家のすぐ裏まで伸びただけで、
      出没件数は統計上爆増して見える。
  3. イノシシ死体という見えない餌が、一時期クマの底支えになった可能性
    • イノシシ増加 → 豚熱で大量死 → 死肉ボーナス → その後の消失
    • これが、ドングリ平年作でもクマ生存率を支えた影の要因かもしれない。
  4. 人間の残飯は「原因」ではなく「結果」
    • 先に回廊と飢餓圧があり、その後で「残飯も食うようになった」と見るべき。
  5. 現代の天敵は、ドングリ大凶作と病気
    • 捕食者としての天敵はほぼ消え、
      代わりに「餌の極端な欠乏」と「病気」が、クマ個体群のリセット要因になっている。
  6. A1(太陽フレア)との組み合わせで見るべき
    • A2側(餌・環境)の議論は、それ単体で本因を語るのではなく、
      「どの年に、どの条件が重なったときに、A1の質的変化と噛み合うか」
      という組み合わせ問題として捉える必要がある。