経験談

経験談

第16話:6mmズレたのは穴か、良心か

~四井金族アムア「超理不尽事件簿」~0. 熊の話ばかりしててごめんなさいケニです。ここしばらく、ブログでは「熊の異常行動」「ブナの凶作」「人間社会と熊の民族移動」と、熊ネタ3連発で走り抜けてしまいました。プレス解析庵なのに、「お前、最近プレ...
経験談

第15話:惰性面取り主義との決別 — 塑性流動の夜明け

―「バリ」ではなく「余肉のカド」を制御せよ―登場人物ケニ:真摯エンジニア。熱量と観察の人。ときどき本音が漏れて机が鳴る。トワ:クール/皮肉/結論直行。冷たいようで現場想い。スチール猫:ボケ&ダジャレ無限連射。要所で核心を踏む不思議ポジ。二次...
経験談

第14話:見えない横力を断つ:犯人は無駄な押さえ

— SECC t1.0/順送160t/U曲げ70mm/左右同軸0.1/左右アーム約120mm/サイドピアスΦ2.3&Φ3.0 —ナレーション:量産が始まってから数か月経ったある日、バリとカジリでストップ。検査票はOK、現物はNG。測っても揃...
投稿

第12話:思考を止めないほうが負ける職場で、思考を止めなかった話

ナレーション:これは「カス上がり」単体の技術メモじゃない。これは、アストロ工業がいつの間にか「金型を持たない金型屋」になってしまった、その現場で起きているゆるやかな崩壊を、現場側の視点でぜんぶ書き出した記録だ。順送型の中で起きた小さな打痕ひ...
経験談

第11話:目立アラサプライズ社向け・薄板SUSカバーで起きた「見えないカス上がり」の真相

—アストロ工業・順送型の現場ルポ(キャラ入り)—ナレーション:工場の朝はうるさくないけど、鉄と油の匂いがする。アストロ工業・精密プレス課。今日もSUS304-2B t0.3のコイルが順送ラインの横で待っていた。これからつくるのは“目立アラサ...
投稿

第10話 理想の残響 無傷を命じた男たち(後編)

Scene 1:現実的な聖域 ―コンタミ防止エアブロー&バキューム装置」ナレーション:社長の発想は大胆だった。プレス設備一式をビニールで囲い、空気そのものを遮断してしまえ――。だが、ケニは首を横に振った。材料はフィーダーを通り、金型に入る瞬...
経験談

第10話:理想の残響 無傷を命じた男たち  (前編)

ナレーション:第9話で現場が暴いたのは、A5051 t1.0・段曲げ高さ12mmの量産品で起きた、Y方向穴ピッチ+0.4〜+0.56mmのズレ。図面も金型精度も「交差内」。それでも現物は狂う。原因は—段曲げのわずかな逆傾きを残したまま、穴あ...
経験談

第9話『ピッチの幽霊、そして段曲げの祈り』

序章:ニソー電気からの召喚状秋の光が、工場のアルミ板を眩しく反射していた。昼下がり、ケニの机の上に封筒が落ちる。差出人:ニソー電気。件名:「Yピッチ+0.56」。ケニ「……来たな。幽霊再び、ってやつだ。」スチール猫「ピッチの幽霊? にゃはは...
経験談

第8話:潰れるべき時に潰れない ― 材料の抵抗と贖罪の法則

序章:沈黙するアルミナレーション7000系 Al-Zn-Mg-Cu 合金、サスペンション部品。4.0mmの板を、2.0mmまで均一に潰す。要求公差 ±0.02。だが、現実はいつも仕様書の外にいる。順送の外周仮抜き後、潰しへ。寸法が出ない。端...
経験談

第7話:魂の玉成 — 「ストリッパーの裏切り」

序章:英雄の静かなる孤独ナレーション:アストロ工業に新しい風が吹いてから、幾晩が過ぎた。「思考継続条項」――ケニが組織に刻んだその哲学は、まだ静かに現場の隅々へ浸透している最中だった。ケニは、夜の工場で黙々と金型の診察を続けていた。鉄の匂い...