打ち抜き加工におけるクリアランスの設定は、破断角度や切り刃の状態といった多くの要素と密接に関わっています。特に、材料ごとに異なる破断角度にクリアランスを調整することで、効率的で無理のない打ち抜き加工ができます。
さらに、切り刃が新しい場合と摩耗している場合では、亀裂の進行や破断面に大きな違いが生じるため、適切な対応が求められます。今回の対話では、これらのポイントを具体的に解説していきます!
AI猫生と弊職ケニの対話
AI猫生:「ケニさん、クリアランスが重要って話はよく聞きますけど、実は“破断角度”のほうが重要なんですか?」
弊職ケニ:「そうだな、猫生。どちらが重要かという議論はナンセンスだと思うよ。クリアランスだけに目が行くということは結果を先走る行為ということだと思う。破断角度は材料によって最初からほぼ決まってるんだ。それを無視してクリアランスを語るなんて、例えるなら猫がネズミを捕まえようとして、餌を忘れるようなもんだ。」
AI猫生:「なんか例えがユニークですね、猫生も一応、猫と言う設定ですがネズミには余り興味がありませんよ(笑)。具体的に、材料ごとに破断角度ってどれぐらい違うんですか?」
弊職ケニ:「例えば、冷間圧延鋼のSPCCは破断角度が5度ぐらいだ。でも、引張強度が高い高張力鋼SPFC590になると8~9度に広がる。同じ鋼でも、引張強度が高くなるほど破断角度が広がるんだ。」
AI猫生:「なるほど…。じゃあ、もっと硬い材料だとどうなるんですか?」
弊職ケニ:「高炭素鋼のSK材なんかだと、破断角度は12度にも及ぶことがある。それに対して、アルミみたいな柔らかい材料は破断角度が8度程度だけど、脆さが際立つから角度が広くなる傾向がある。」
AI猫生:「アルミって柔らかいのに角度が広いんですね!なんだか予想外です。」
弊職ケニ:「そうだ。破断角度が広い材料は、亀裂が進むタイミングが早くて、破断面が大きくなる傾向がある。これが材料特性と密接に結びついてるんだ。」
クリアランスと破断角度の関係
AI猫生:「じゃあ、破断角度に合わせてクリアランスを調整する理由って何ですか?」
弊職ケニ:「いいか、破断角度にクリアランスを合わせることで、無理の無い最適な打ち抜きができるんだよ。それを無視してクリアランスを設定すると、例えばSK材の場合だと、どうしても通常の常識の範囲(5%~10%)だと二次せん断で見るに堪えない姿になる。」
AI猫生:「二次せん断ってなんですか?」
弊職ケニ:「前にも打ち抜きのところで説明したが、簡単に言うと、亀裂が予定外のタイミングで材料がないところに材料が干渉して二度目のせん断を引き起こしてしまう現象だ。これが起きると、せん断面が荒れるし、微小なカスが製品に付着し打痕やカスだらけの製品になり品質に悪影響を与える。」
AI猫生:「なるほど…。破断角度が広い材料では、クリアランスを広げる必要があるんですね。」
弊職ケニ:「もう一つ打ち手がある。刃先を丸めてしまい破断のタイミングを極端に遅くする方法だ。これは特に硬い材料で効果を発揮するので覚えていて欲しい」
切り刃の状態とクリアランス調整
AI猫生:「ところで、切り刃の状態って、破断角度やクリアランスにどう影響するんですか?」
弊職ケニ:「新しい刃先はシャープだから、破断が早めに進行する。その結果、破断面が多くなりやすい。逆に刃先が摩耗していると、材料への亀裂が遅れ塗り壁効果でせん断面が長くなり破断は遅れてパンチとダイとのクリアランス内に材料が入りバリとなる。また、せん断面が荒れる。」
AI猫生:「じゃあ、刃先が摩耗した場合はクリアランスをどう調整するんですか?」
弊職ケニ:「それは刃先を研磨で再生するか、部品を交換するのが一番早い。クリアランスの調整はしいて言えば、狭く調整することで少しはマシな抜きになる。けど、これは暫定対応なんだ、毎度これはやらないようにな。」
AI猫生:「つまり、刃先の状態に応じてクリアランスを調整しつつ、最終的には金型自体のメンテナンスが大事ってことですね!」
まとめ
打ち抜き加工では、破断角度は材料特性によってほぼ決まっており、それにクリアランスを調整することで効率的で無理のない加工が可能になります。特に、硬い材料では破断角度が広く、柔らかい材料では狭くなる傾向がありますが、アルミのような例外もあります。
また、切り刃の状態は亀裂進行や破断面の状態に大きな影響を与えます。新しい刃先や摩耗した刃先に応じた適切な対応が、加工の安定性を保つ鍵となります。観察力と調整力を駆使して、最適解を見つけることが技術者の腕の見せ所です!