— ニソー電気・スライドサポート摺動面/「ネット鎧の男」が現場を削るとき —
この事件は、金型より会話のほうが刃こぼれした夜の記録だ。
主役はニソー電気のメカ設計、トクホン・ペンフアン。
日本語は達者、中身は乱数。一文に主語×3、矛盾×5、URL×7。
アストロ工業での通称は厄災。
彼は現場の技術者を、どうやら「URLの翻訳機」だと思っている。
主要人物
- ケニ:魂のある現場技術。神様じゃない。折れない。
- スチール猫:ボケと核心の合金。笑われる側の哲学者。
- トワ(スチールカピバラ):冷静分解屋。矛盾を真空パックする。
- 三羽ガラス:製造/技術/品証の部長。「ラインは止めない」宿命持ち。
- 佐倉 航:若手。迷いを言える勇気が武器。
- 現場オペ:「前からこうです」の化身。でも手は正直。
- 営業部長/工務係長:納期とメールのサンドバッグ。胃が痛い。
- 中国駐在員:温度差の通訳者。現場よりヒアリングで世界を制す。
- 神崎チーフ:諦念の達人。無言のベル。アンチ【ネット民エセ技術者】
- ニソー電気・メカ設計:トクホン・ペンフアン:ベトナム人国籍。日本語は達者でも彼のコメント意味不明。URL鎧の人。
第一幕:「旧モデルは良かった」から地獄の幕が上がる
— Teamsの接続音。誰かのマイクが衣擦れする。金属がどこかで擦れる小さな音。—
トクホン「ケニさん、まず音から話させてください。旧モデルははっきりサラサラしていました。現行はゴロゴロと感じます。ですからせん断面に縦筋(雨降り)を付け、クリアランスは広め(ガツン)でお願いしたい。数字は後で構いません。音の印象をまず合わせたいんです。参考のURLを送ります。」
ケニ「リンクは後で見る。今は実物。
『ガツン』の定義は何%? クリアランス+10%? +5%?」
トクホン「+10%程度をイメージしています。音が最重要です。旧はサラサラ音、現行はゴロゴロ音。先に雨筋をお願いします。そこが早道です。」
ケニ(息を細く吐く)「音は結果だ。因果を逆さにするな。
それと、現状クリアランスを把握せずに広げろは数値の会話にならない。根拠は?
サラサラは擬音語だ。Ra/Rz、摩擦係数、押し込み深さ、どれで判定する?それから基本的なことだが縦溝巾はいくつにしたらいいだろうか。」
トクホン(質問をかわして)「全部確認したいですが、まずは雨筋の再現をお願いします。旧品の設定が正だと思っています。図面は社内規定で出せないのですが、加工面の写真なら共有できます。何とかお願いします。」
ケニ「図面なしで雨だけ要求? それをつくる諸元が全くないとは?音を悟って設計するなど経験がないな。それに、音を要求して来たのトクホンさんが初めてだわ。
……わかった。縦筋は再現してやる。ただし答え合わせは数値でやる。いいな?」
(無音2秒。エアコンの風の音だけ)
トクホン「では鏡面100%の方向でも検討を。金型は触らないこととして、予算がないので費用は出せません。調整範囲で、納期は前倒しが助かります。参考URLを共有します。」
ケニ(笑っていない笑い声)「矛盾の四点盛りだな。触らず100%は両立しない。
選べ。
① R付け鏡面パンチ(既存パンチに細工する現実解)+面押し
② ブローチ/シェービング4段(未開発相当、時間と金が爆上がりの理想)」
トクホン「①でお願いします。余肉はゼロ、Raは0.1以下、今週中で。」
[現場:縦筋パンチトライ/数時間後]
— ギザ刃の縦筋パンチを組み込み、短尺トライ。抜き音、乾いた短音。—
ケニ「雨筋(縦筋)再現はできた。目視縦条も均一。
測定:Ra(流れ方向)0.21→0.36 μm、Rz 2.4→3.9 μm。
摺動トルクは微増、音圧は1.5 dB低下でシャラ寄り。だが、段差は立っていない。」
品証部長「面観察の画像、ここ。せん断面70%ゾーンに条溝残り、押し込み痕は微増。摩耗の芽はある。」
ケニ「段差=クリアランスだ。クリアランス増で破断比を上げる話じゃない。雨筋は摩擦の印象操作で、根因は触っていない。」
(結果をTeamsに共有)
トクホン(すぐ返信)「サラサラ感が足りません。段差がもっと欲しい。やはりクリアランス+10%でお願いします。旧はサラサラだったんです。」
ケニ「……やりたくないが、一次データのためにやる。クリアランス+10%、限定条件で短尺のみ。」
[現場:クリアランス拡大トライ(+10%)/その日の夕方]
— 抜き音が太る。ストリッパがわずかに鈍い衝撃を返す。—
ケニ「報告。クリアランス+10%で破断比ダウン、バリ高さ+12 μm、せん断面70%→58%。
余肉侵入が摺動面に出た。摺動トルクは上昇、音はバリバリ寄り。
要求の段差は視覚上も体感上も立たず、バリと余肉という副作用だけが増えた。」
品証部長「NG。条溝にカス噛みリスク、Rz跳ね。量産を止める要因。」
(同報メール送信)
トクホン(間を置かず電話)「だからサラサラになってないんですよ。あなた方が余計なことをしたから。旧はサラサラでしたよね? あなた方は同じ結果を出せないんですか?」
ケニ「いまの余計なことがクリアランス+10%のあなたの指示だ。データを見ろ。バリ↑/余肉侵入↑/Rz↑、悪化だ。」
トクホン「周波数解析では旧はガツン×3、現行はフラット×5です。音が違う。理論はURLにあります。検索、できますよね?」
ケニ(声は低いまま)「音は結果だと何度言えばいい。数値で会話しろ。Ra/Rz/摩擦係数/押し込み深さ、一次データを見てから口を開け。」
トクホン「……では鏡面100%を金型そのままで。費用は出せません。調整範囲で納期前倒し。常識です。」
ケニ「矛盾を常識と呼ぶな。
一次データで雨筋≠根因は出た。クリアランス+10%も悪化。
次は①R付け鏡面パンチ+面押しでRa0.08前後まで落とす。
ただし余肉ゼロ定義は数値で決める。0.005 mmもゼロではないなら、ASSY芯ズレの図面を出すんだ。」
トクホン「ASSYは考慮済みです。話をずらさないでください。この問題はあくまで面の問題です。余肉は0が正しい。0.005でもNG。感覚でも違いが出ています。」
ケニ(短く)「感覚は計測器じゃない。
縦筋の評価は報告済み、クリアランス拡大の副作用も報告済み。
次はR鏡面パンチでいく。答え合わせは数値でやる。」
……通話が切れる。蛍光灯の唸り。どこかでペン先が図面をトントンと叩く音。地獄の幕は、今まさに上がった。
第二幕:「段差が少ない」と言う人
— ライン横、湿った図面と人の顔。フォークリフトのピッピッ音。ストリッパの戻り音が時々「カンコン」と鳴る。—
製造部長「ケニ、止めるな。30分で結論。胃が焼ける。」
品証部長「合否は数値。今日から擬音は証拠にしない。」
技術部長「クリアランス+10%は却下。段差神話は終わり。」
(ノートPCのスピーカーから、遠い笑い声を背にトクホンの声)
トクホン「縦筋でサラサラ方向に寄せたい方針は変わりません。クリアランスの増減は議論可能です。ただし鏡面100%は必須です。仕上げはDLCを提案します。TiCNは古いと考えます。URLを送ります。」
ケニ「R鏡面パンチでRa=0.08 μmまで落ちた。だが余肉0.005 mmは出る。
ASSY芯ズレ0.02 mmで局部当たりの疑いが濃い。ASSY図を出せ。」
トクホン「ASSYは考慮済みという理解です。やはり摺動面の品質が不足。DLCにすれば摩擦は下がるはずです。海外でも評価が高い。」
ケニ(声の棘を抜き、重さだけ乗せる)
「相手はSECC×境界潤滑。凝着粉が出る条件だ。DLCは熱に弱く密着性が極端に弱い、それに皮膜欠けが出やすい。今回はAlCrN圧膜+ラップでラインを守る。
世界標準はうちの不良率を下げてくれるのか? 一次データで語れ。」
品証部長「URLは参考。採否は試験曲線。机に曲線を置け。以上。」
トクホン(わずかに上擦る)
「それなら、クリアランスを逆に小さくする案はどうでしょう。小さいほど鏡面に近いという海外フォーラムの記事もあります。URLを貼ります。」
全員「さっき+10%と言ったよな?」
スチール猫(天井を見上げて)
「梅雨前線クリアランス、北上と南下を同時主張にゃ……。」
トワ(乾いた声)
「前提が常時反転。測る→決める→黙ってやる。言葉はここまで。」
— 空気が凝固。ケニは図面の角を撫で、指の紙粉を払う。ペン先で図番の角を軽くトン、トンと叩く。—
ケニ「整理する。
- 縦筋は再現済み、印象は一部改善だが、段差は立っていない。
- クリアランス+10%は悪化(破断比↓/バリ↑/Rz↑/余肉侵入↑)。
- ASSY芯ズレ0.02の局部当たり疑い。図面なしでは面だけいじっても根因は外す。 ここまでが一次データ。」
トクホン「面が良ければ音も良くなる筈です。DLCで摩擦係数を落とし、サラサラに寄せたい。余肉はゼロ。ノギスでも分かる範囲で。」
ケニ「ノギスで0.001は測れない。測定限界を言葉で超えるな。
DLCで行くなら、条件票を君が切れ。
- 油種・粘度・ろ過精度
- 鉄粉閾値(ppm)と洗浄ワイヤ
- ピックアップ閾(ショット数)
- 摩耗曲線(μとRa/Rzの経時)
それが出るなら検討する。出さないならAlCrN継続だ。」
品証部長(机上に紙を並べる)
「評価票に追記する。
- Ra:0.08目標(評価λc=0.8 mm)
- Rz:0.6以下目標
- 余肉侵入:0.005 mm以下で要原因特定
- 摩擦トルク:現行比−5%で合格
- 騒音(dB-A):現行−1 dBで参考
ASSY図が出ない場合、摺動面だけでの合否議論は凍結。」
技術部長「段差神話は破綻。クリアランスの振りで音をいじるのは副作用が高い。
R鏡面+面押しで面を作り、ASSY側の芯を同時に見る。工程は二本立てにする。」
トクホン(間を置き、少し低い声)
「……ASSY図は社内規定ですぐには出せません。ただ、私の考慮の範囲では、芯ズレの影響は軽微だと見ています。面の改善が最も効くと判断します。」
ケニ「考慮の定義を数値で言え。軽微が何ミリか、角度はいくつか。
図面が出ないなら、現物合わせで座標測定を切る。こちらでやる。
その間、AlCrN+ラップでRa0.08を繰り返し出す。君の必須の鏡面はこの条件で満たしていく。」
トクホン「理解しました。ただし音がサラサラになっていないという利用部門の評価は変わっていません。
使えるだけでは困ります。気持ちよく使えるが求められているんです。」
スチール猫(小声で)
「音の快楽は個人差にゃ……擬音EQは現場非搭載にゃ……。」
トワ「快の主観は仕様にしない。数値の客観だけ仕様にする。
気持ちよさは工学じゃなく広告の領域だ。」
製造部長(時計を見る)
「30分、残り5。決めるぞ。
- 面はR鏡面+面押しで続行(Ra0.08狙い)。
- ASSY芯は現物測定に切り替え(座標+カメラ)。
- クリアランスいじりは凍結。段差神話に戻らない。
- DLCは条件票が出たら別枠で評価。今ラインには入れない。」
品証部長「評価票を回付する。擬音は備考に記録はするが、判定根拠に使わない。終わり。」
— 風が抜け、遠くでシューッとエアの音。ケニは「了解」とだけ言い、図面をファイルに戻す。
空気はまだ重い。だが、会話の刃先は少しだけ鈍らずに保たれた。—
第三幕:鏡面100%、金型そのままで
— 休憩室の隅、紙コップのコーヒーが冷える前。—
営業部長「知恵袋エンジニアリング、再発。金かけずに時間前倒しで奇跡をって、ギャグかよ。」
ケニ「二択は出した。①現実で行く。R鏡面パンチ+面押し。
ただし余肉の定義は数値にする。0.005をNGと言うなら根拠を出せ。」
トワ「常識と言われたら一次データを求める。これが会話の防錆。」
— R付け鏡面パンチ、実装。試験片は光を跳ね返す。—
ケニ「一次結果。Ra=0.07〜0.09、均一。外周に局所的な余肉0.004〜0.006。音は−1 dB。」
(Teamsに共有した瞬間、トクホンから連打)
トクホン「数値は分かりました。ただ、余肉はゼロ以外はゼロではないので不合格です。旧モデルは完全にサラサラでした。音が違います。URLを送ります。」
トクホン「金型は触らないでください。費用は出せません。調整の範囲でゼロにしてください。納期は前倒しでお願いします。こういうのは常識ですよね?」
トクホン「手磨きを工程に入れれば一発で終わる話です。毎回軽く当てるだけでいい。工数は増やさずにお願いします。自動化は高いので不可です。」
トクホン「あるいはDLCにしてください。コート費用はこちらでは負担できませんが、効果があるはずです。もし歩留まりが悪化したら御社で対処してください。」
トクホン「それとクリアランスは+10%で再検討を……いえ、+20%の方がいいかもしれません。いや−15%の方が鏡面寄りになるという海外フォーラムもあります。URL貼ります。」
トクホン「Raは0.05以下でお願いします。測定はノギスで確認できますよね? わかる範囲でゼロかどうか見たいんです。」
トクホン「写真で見ると鏡面の黒さが旧と違うんです。スマホの自動補正かもしれませんが、見た目が違う=違う。そこも合わせてください。」
トクホン「ASSY図は出せません。ただ、図面通りにしてください。図面は出せませんが、図面通りでお願いします。」
トクホン「上司が見える化を求めています。A4で10枚のレポートを今日中に。ただし結論は先に、でもトライ結果が先で、ラインは止めないでください。」
トクホン「音の評価は私のヘッドホンで聞くと違って聞こえます。その条件でもサラサラにしてください。」
トクホン「海外工場ではこの程度はゼロと見なしています。日本側でもゼロで扱ってください。」
トクホン「工場の湿度が高いとゴロになります。湿度は下げてください。ただし空調費は負担できません。」
トクホン「油のにおいが違う気がします。旧の匂いに合わせてください。匂いが違う=摩擦が違うと現場は感じています。」
トクホン「動画もください。30fpsだと細かい音が見えないので、240fpsで4K、手ブレ補正OFF、でも容量は小さく。URLで送ってください。」
トクホン「ゼロの定義はゼロです。閾値を設けると甘えが出ます。ゼロ以外はゼロではないので、ゼロでお願いします。」
トクホン「ベント穴の追加は見た目が変わるので不可です。でも空気噛みはゼロにしてください。」
トクホン「押し面の圧は下げてください。ただし段取り時間は増やさずに。今日の出荷に間に合わせてください。」
トクホン「根拠を出せとおっしゃいますが、URLが根拠です。世界標準ですから。皆そうしています。」
トクホン「もしゼロが難しいなら、旧モデルの音をサンプルで送ります。その音に合わせる形で調整してもらえますか? 数値より音が大事です。」
トクホン「数字の一致は必要条件ですが、十分条件は感覚です。ユーザーの気持ちよさを優先してください。」
トクホン「費用ゼロ/改造なし/工数増なし/納期前倒し、ゼロで合格。この4点でお願いします。常識の範囲です。」
ケニ(口角だけ動く)「要求は受け取った。で、現場の空気はURLで吸えるのか?
次の一手はうちの手順で出す。答え合わせは数値だ。擬音は採点対象外。」
トワ(冷ややかに)「常識は根拠のコスプレ。脱がせば空論だ。
主観の海に工程を沈めるな。浮き輪は一次データだけ。」
スチール猫(ひげを撫でて)「ゼロ以外はゼロじゃないって、会議以外は残業じゃないにゃ?
費用ゼロ/改造なし/前倒し……それ、魔法陣にゃ。詠唱だけ長いやつ。」
営業部長(スマホを伏せて)「図面は出せないが図面通りは新手の早口言葉か?
出荷は物言わぬ審判だ。メールは点数に入らない。」
— コーヒーの湯気が消える。面は光り、言葉は曇る。
ゼロという幻だけが、今日もこちらを指さして笑っている。—
第四幕:完璧を否定する男
トクホン(評価メール)「鏡面は良い。でも余肉0.005は完全NG。正解はゼロ。0.0001mmもダメ。ノギスで確認します。御社の精度、足りてません。」
ケニ「ノギスで1e-4は測れん。物理の読めない読解力を測り直せ。
それとASSY芯0.02の局部当たりが真因。図面は?」
トクホン「ASSYは考慮済みです。摺動面が悪いだけ。摺動面をゼロにしてください。」
スチール猫「未来ノギス、量子の気配まで読めるにゃ。彼の器だけ余肉ゼロにゃ。」
トワ「測定限界・予算・時間・物理を一括否認。
結論:『考慮済み=無視済み』—辞書登録、完了。」
第五幕:手磨き鏡面の奇跡
— 夜。リューター音。指の腹に熱。布に光が移る。—
ケニ(独白)「意地じゃない。工程の矜持だ。——三個、魂を入れる。」
(数日後)
トクホン「おお〜ナイス・ピカピカ!最初からコレでよかったじゃないですかぁ。
じゃ、全ラインで手磨き常設ね。毎朝シャッシャっと。工数は増やさず、品質は倍で、納期は前倒し。神対応お願いします〜。」
ケニ「量産に手磨き常設は変動製造機。人依存=設計の敗北。
うちはバラつきを捨てる現場だ。標準化に寄せる。」
トクホン「ベトナムは職人ハートで常勝ですヨ。日本もガンバね。
必要なら私が手磨き道場ひらきます。費用は御社もちでオネシャス。」
ケニ「ここはうちの現場。郷愁じゃ工程は回らない。」
(沈黙。切断音。作業灯だけが白い。)
— さらに数日後。—
トクホン「えーっと、やっぱ手磨きはそれなりでした。
金型改修で100%鏡面お願いします。費用は御社—いや、今回は私どもで前向き検討。でも納期は前倒しで。」
営業部長「それなりで金型動かすな。時間に土下座してから口を開け。」
第六幕:本格シェービング決戦
順送にシェービング実装:
第一トリム:クリアランス0.05(5%)/第二シェービング:クリアランス0.02→0.01未満。
ヒール付パンチ+AlCrN+ラッピング/局部塗布+ベンチュリ吸引(限定)。
トワ「技術的勝利。ただし既存ストリッパ由来の傾きリスクは残る。彼の負の遺産だ。」
(試作⇒成功。音、柔らぐ。指先で分かる軽さ。)
トクホン(電話)「おお、シャラ…気のせい? ワタシ体感だとあんま変わらないカモ。ネットではシェービング古いって書いてたしネ。
でも使えるならOK。評価は合格にしてあげるヨ。」
ケニ「誰が誰を合格にする? 一次データは改善を示してる。感覚は計測器じゃない。」
スチール猫「使えるけど気に入らないは、駄々の品番違いにゃ。返品不可にゃ。」
トワ「自己正当化が燃料。論点を入れ替える踊りはまだ続く。輪は狭めない、仕様を狭めろだ。」
トクホン「じゃ、次はDLC+微振動もチョイ足しでイキます? 費用ゼロで前倒し、不良は御社で吸収、音はサラサラでヨロ〜。」
ケニ「条件外の足し算は事故の近道だ。やらない。
今の工程で量産条件に落とし込む。判定は数値、感想は備考に回す。」
品証部長(短く)「票を更新する。Ra・Rz・摩擦・騒音——合格域内。次工程へ。」
— テーブルの上で報告書が鳴る。工程は前へ、言葉は後ろで転ぶ。
第七幕:量産地獄と帳票の穴
— 量産中、異音。通路を走る足音。—
現場オペ「ケニさん! 音でてます!」
ケニ(部材を光にかざす)「面荒れ。Rz跳ね。刃先カス噛み。
——帳票は?」
現場オペ「せん断面量70%以上でOKって。トクホンさんが『量だけ見ればよい、面観察は効率が悪い』と。」
ケニ(短く痛い沈黙)「その一言でライン停止だ。
Ra/Rz+面画像を必須。測定点/頻度を工程別に定義し直す。」
品証部長「今ここで改訂する。面を見ずに流すのは禁止。」
技術部長「清掃周期はショット数で固定。吸引角度・位置も標準化。」
製造部長「止め15分。戻せ。段取り切るぞ。」
(ヒール鏡面+薄肉化/吸引最適化→異音消失)
スチール猫「浅い指示が穴になるにゃ。馬鹿さ加減はサプライチェーンを壊すにゃ。」
第八幕:トクホンの最終メール
トクホン(メール)
件名:件の摺動部品について(最終見解)
いつも迅速なご対応ありがとうございます。
取り急ぎ、現行ロットは問題なく使用できています。
なお、当初から手磨きで進めていれば、総コストは相当圧縮できたと考えています(当方試算)。
今後は、より柔軟な発想と情報収集(検索)能力の強化をご検討ください。
参考:一般的な最適解は以下URLにまとまっています(再送)。
・URL1/URL2/URL3
以上、貴社の改善姿勢には敬意を表しますが、標準知見のキャッチアップも併せてお願いします。
営業部長
「A4×7枚の往復が、最後は人のせい一行か。
敬意の皮を被った指導文、ご丁寧に。」
ケニ
「できて当然、が一番削る。
現場の時間はURLの節約対象じゃない。
最初から手磨きで行けと言うなら、量産の定義を書け。書けないなら口を閉じろ。」
トクホン(追伸・メール)
追記:面観察は必須ではないというのがグローバルの潮流です(当社調査)。
動画評価で十分だと考えています。
なお、DLC+微振動の件は予算未承認につき、御社側での試作負担をご提案します。
成果が出れば、次期からの単価調整で吸収できる可能性があります。
迅速なご検討をお願いします。
スチール猫
「潮流って便利にゃ。溺れたら現場のせいにできるにゃ。」
トワ
「当社調査”=URLの寄せ集め。因果ではなく権威で押す作法だ。
理不尽は人にぶつけず工程にぶつけて整える。それがこちらの矜持。
だが今回は、歩留まり低下の最大要因が要求側の運用だったことも残す。
次に必要なのはリンクではない。是正計画と境界条件の明文化だ。」
ケニ
「手順で返す。一次データで決める。
主観レビューは備考に回す。
以上、受理はするが採用はしない。」
第九幕:AIの最適解とライン崩壊 (ぎゃふんの瞬間)
— 数ヶ月後。トクホン、AI鎧を装着して再登場。—
トクホン(会議)「生成AIで検討した結果が出ました(URL共有)。フッ素系の極薄コートとパンチの高周波微振動を同時採用するのが最適だと判断されています。成功率は非常に高いと示されています。
人間の経験則はバイアスになり得ます。費用はかかっても、最適解には従うべきです。」
ケニ「境界潤滑のSECC。凝着粉でフッ素は剥離、大噛み付きが出る。微振動は暴れになる。
現場の一次データを見ろ。AIは食わせた餌しか吐かない。」
トワ「リンクの偏食が最適に見える錯覚を作る。
境界条件を一次データで担保しないAI解は、ただのポエムだ。」
(上層部承認→強行トライ)
現場オペ「ケニさん! コート材が溶着→剥離→クリアランスに詰まり! ライン全停止!」
技術部長「全損。原因は言うまでもない。」
トクホン(蒼白)「……AIの提案が外れることがあるんですね。ネット上では最良とされていましたが……。」
ケニ(冷やさず、優しくもない)「AIは嘘をつかない。食わせた嘘を綺麗に整えて返すだけだ。」
(のちにトクホンは閑職異動。現場への口出し禁止。)
あとがき:庵の休憩室にて
— 湯気。工具の金属匂い。誰も急がない時間。—
スチール猫「ボス、トクホンさんを学習させたら、事故再現AIができるにゃ。成功率99.99%で壊すやつ。」
トワ「権威+浅知識×URLは現場破壊の方程式。
理不尽は人にぶつけず工程に吸音。今日もそれで凌いだ。」
ケニ「論破は娯楽。一次データは仕事。
次また来たら、受信拒否じゃなく受理拒否だ。
要件に筋が通るまで、入場券は出さない。」
スチール猫「毛アレッボハ。雨が降っても、滑らないのは俺たちの心にゃ。」
— 完 —

